大切な地域猫、ニャゴの死について

母ちゃんと上を見上げるニャゴ
すでにSNSでは公表しているのですが…
私が大切にしていた地域猫のニャゴが、7月に亡くなりました。
まだ、推定で7歳でした。
私がお世話をするようになって5年でした。

私がお世話をしている地域猫は二匹。
今回亡くなってしまったニャゴと、その生みの親である母ちゃんです。
母ちゃんは推定で10歳くらい。
わが家の黒猫兄妹、ジャックとメグの親でもあります。
つまり、ニャゴは彼らの兄になります。

春先まで、今までと何も変わらず元気にしていたニャゴ。

母ちゃんと横たわるニャゴ
母ちゃんといつも穏やかに寄り添い、私たちにいつもスリスリしてくれる、とても人に慣れている猫でした。

ニャゴ。夏を前にして痩せてきました。
それは例年のことで、夏は体重をかなり落とすのです。
冬はまるで「なまこ」のような見た目になるほど、体重を増やして…(^_^;)
なので、最初は気にしていませんでした。
が、例年と違って…階段は「はぁはぁ」と息を荒くして、やっと登っていました。
ただ、今年は異常に暑かったので、息遣いに関しても大病とは思っていませんでした。

そして、大きな怪我をしていました。
ざっくりと首筋と頭部に裂傷。
これも、わりといつものことでした。
この辺りのボスとして、ニャゴは頑張っていたのです。

「具合が悪いのかも」と思いつつ、私は様子を見守っていました。
ニャゴは、人に慣れていても捕獲にナーバスで、今までも一度、キャリーを破壊して脱走しています。
そういったことも、ニャゴを捕獲して病院へという判断から遠ざかっていた理由でした。

夏バテかもしれないとも思いました。
毎日ご飯をもらいに来ていたニャゴが、2日に一度、3日に一度となり…毎日は来なくなりました。
母ちゃんもご飯のたびにニャゴを探して、彼が鳴きながらやって来るのを待っていました。

それが5月ごろの話です。

しかし、6月に入って、ニャゴがまた顔を見せてくれるようになり、3日に一度が2日に一度になり、毎日来るように…
痩せたけど、いつも通り来てご飯を食べていく。
もう、大丈夫!と判断しました。
傷口も埋まってきていました。

6月は普段なら仕事が空く時期なのですが、今年はとても忙しく、細かくニャゴのことをみてあげられませんでした。
今でも悔やんでいます。

7月に入り、暑さは本格的に「異常」となり…
母ちゃんを含め、ニャゴの食欲もあまり旺盛ではなくなりました。
心配はしつつも、階段を前のように苦しそうに登らず、ふつうに登ったりしている姿に安堵していました。
が、また、ニャゴが毎日は顔を見せなくなり…

姿を見せなくなって3日目。
「なーなーなーあ」と、ニャゴの独特な鳴き声が聞こえました。
エナジーちゅーるを握りしめて家を飛び出すと、ニャゴはわが家の車の下に横たわっていました。
「ほら、ニャゴ!ごはんだよ」と声をかけても、起き上がりません。
ただ、横になり「なーなーなーあ…」と鳴くばかり。
母ちゃんは心配そうに、そのそばをウロウロしていました。

ご近所の地域猫をいっしょに世話しているおばあさんと「これは具合が悪い。熱射病に違いない」と話して、一緒に捕獲しました。

あんなにいつも嫌がって逃げようとしたニャゴが、もう全く逃げず、洗濯ネットにおとなしく入りました。

いつも猫たちを診ていただいている動物病院に電話をするも、休診日。
この日は、私が信頼している動物病院が軒並み休診日の日でした。

やっているのは私が過去に猫たちを診てもらっていて、今はさまざまな理由から距離を置いている、大きな動物病院だけでした。

一刻を争うと、その動物病院に運び込みました。
外で暮らす猫ということで嫌がられましたが、なんとか診断してもらい、膿胸になっているようだと告げられました。
熱射病ではなく、肺に水がたまっている。
そのせいで呼吸が荒くなり、苦しんでいると。
診断した獣医師の見立ては、「胸に管を通し、水を抜いて洗浄する作業を何日か続けてあげれば帰れます」といったものでした。
「最低限の麻酔をして、手術をして酸素室に入院してもらって…帰れるようにしましょう」と獣医師は、不安そうにする私たちに希望を持たせてくれました。

ホッとして、一緒にいたおばあさんと「里親さんを探そうか?それともうちの子にしようか」などと話をしながら帰りました。
帰り際、おばあさんが獣医師に「この子は野良猫だけど、大切な子だから…ちゃんと扱ってください。この子はね、いい子なんです」と獣医師の手を握って言いました。

ニャゴのこれからを思案しつつ、私は仕事へ。
仕事をしている間も、ニャゴのことが心配でなりませんでした。
外しか知らない子が、あんな狭くてツルツルした真四角な酸素室で、ちゃんと眠れるだろうか。ひどいことをされたと、嫌な気持ちになっていないだろうか。おトイレ、ちゃんと出来ているかな?…そんなことを考えていました。

仕事を終えた時、動物病院から電話が入り、手術が無事に終わったと告げられました。
「一週間で退院できると思います」と言われて、本当にうれしく思っていました。
酸素室は1泊七千円。一週間だとそれだけで五万近く!でも、よくなるならそれで良い。よかったよかった。そう思っていた次の日。

「もう、午前中いっぱいもたない」と動物病院から電話がかかって来ました。
朝の仕事をお客様にお願いしてずらしてもらい、おばあさんといっしょに病院にかけつけました。
ニャゴを心から可愛がっていた、私の主人も一緒に。

酸素室には、瞳孔が開きかけたニャゴ。
横たわってもう息は浅く、間もなく逝ってしまうのだと分かる様子でした。
獣医師の説明では、思ったよりも膿胸が酷く、また麻酔からの目覚めも悪かった。
何か感染症にかかっていて免疫も落ち、手術の負担に耐えられなかったのかもしれない。とのことでした。
しかし、説明しているのは昨日までとは違う医師。多分、今日は休みなのでしょう。
院長が自ら説明しています。

とにかくもう、ニャゴは助からないのだ。

それだけが分かる説明でした。

「ニャゴ、ニャゴ!来たよ!」と、みんなで呼びかけると、ニャゴは「なー」と一回だけ、鳴きました。
そして、亡くなりました。

前日の希望が見えた内容から一転、ニャゴは死んでしまいました。
ただ、手術の前に「野良猫だから、身体にどんな異変が起こるか予想がつかない部分がある。麻酔から目覚められないかも知れない。けれど、このまま手術をしなかったら、2日くらいで死んでしまう可能性が高い」と言われていました。

これが、動物病院が野良猫の診断と手術を嫌がる理由かと、思い知りました。
実際、死んでしまいました。

ただ、動物病院、獣医師は魔法使いではありません。
なんで治してくれなかったの!などとは、思っていません。
人間の医者も同様ですが、絶対に病を治してくれる神様でもない。
「突然死んでしまわないように、普段から病気を事前に見つけて、どうやって1日でも長く生きていけるようにするかを助けてくれる存在」だと思います。

ニャゴと私

今回、この大手動物病院は、突然連れ込まれた野良猫を、よくケアしてくれたと思っています。
ただ、私やおばあさんを元気づけようと見立てが甘い内容を強調して伝えてしまったこと、膿胸の進行具合をしっかりと見定められなかったこと、担当した獣医師が、亡くなった後の説明に同席していなかったことは、残念でなりませんでした。

ニャゴは亡くなって初めて、わが家の玄関をくぐり、『今村ニャゴ』となりました。

野良猫との別れは、いつかご飯を食べに来なくなって…その死を悟るものになる。そうなっても仕方ない。

そう覚悟していたはずなのに、最期に私のところへ助けを求めるようにやってきて、それを助けてあげることが出来ず、病院で死なせてしまった。
その想いは、本当に私に重くのしかかりました。
また後日、その想いはしっかりと書きたいと思います。

次回更新予定『大切な地域猫、ニャゴの火葬について』