すーちゃんが教えてくれた大切なこと
102回。
これは、私のお客様だった「すーちゃん」に行ったシッティングの回数です。
すーちゃんは、今年、亡くなりました。
推定で18、もしくは19歳でした。
すーちゃんは、持病があり、12時間おきのインスリン注射が必要な猫でした。
が、それ以外は元気な老猫。
穏やかで、人を拒絶しない、いい子ちゃんでした。
飼い主のN様は、ご夫婦でご多忙なこともあり、必要な際は私が出向いて、注射を打っていました。
それを積み重ね、気がついたら、102回でした。
初めてN様のお宅へ行き、「実は、この猫には注射が必要なんです」と言われたときの衝撃たるや。
「自分の猫以外に注射!?無理無理!!」と思ったのですが…
N様と私の会話をそばでじっと聞いていて、N様が注射をこうやって打っているんですとレクチャーしようと、すーちゃんに近づいたとき…
そっと顔を上げて、信頼の眼差しでN様を見ました。
そして動かず、じっと静かに身を任せていました。
その時「この猫なら大丈夫だ」と思ったのです。
その後は…
注射を打つための内容をまとめた資料を作って、自分の理解を深めてN様に見ていただいたり。
逆に、N様から投薬についての資料を作っていただいたり。
すーちゃんが快適にお留守番できるようにと、いろいろなことを新たに考えたり、相談したり、やってみたり。
そうして、102回。
私は、すーちゃんとお留守番の時を過ごして。注射を打って。痛いことをする私を許し、存分に甘えてくれました。
本当はあと8回、予約を入れてもらっていたのですが、体調が悪化しキャンセルになりました。
体調が悪化したすーちゃんを、病院に連れて行ったこともありました。
※私が普段通っている病院と同じだったので、可能なことでした
キャリーバッグに入れて、車に乗せて。
その時も、すーちゃんは私を拒絶することなく、穏やかにしていました。
点滴を打つときも、注射を打つときも、入院するよとケージに入ってもらうときも。
病院の先生と「いい子すぎて、涙が出ますね」と話をしたのでした。
N様のお宅は、すーちゃんが亡くなる数ヶ月前から、ペットシーツを敷き詰め、トイレを複数用意し、すべてをすーちゃんのためにと過ごしていました。
すーちゃんが、今日明日の命となった時。
「良かったら、会ってやってください」と連絡をいただき、N様がご不在のタイミングでしたが、駆けつけました。
注射も薬も必要なく、ただ、ただ、すーちゃんを眺めて、なでました。
あまり動かず、じっとしていたすーちゃんは、目をしっかり開けるのもちょっと辛そうで。
でも、最後に私のことを見て「また来たの?」と思ったことでしょう。
だから「今日は、お留守番じゃないよ」と話して、安心してもらいました。
「またね、すーちゃん、また会えるからね」それが、すーちゃんに伝えた最後の言葉です。
その後、亡くなったすーちゃん。
N様のお宅にご挨拶に伺った際、敷き詰めていたペットシーツも無くなり、そこかしこにあったトイレも無くなり。
私は「お部屋、広くなりましたね」と言って、泣いてしまいました。
N様も「…ね、こんなに広かったかなと思うんですよ」と返してくださいました。
とても、がらんとしたように感じました。
猫が1匹いなくなっただけで、家がこんなにも広くなるんだなと実感しました。
「すーはね、私の腕の中で亡くなったんですよ」とN様。
家族の腕の中で亡くなるなんて、最後の最後までいい子ちゃんです。
「無理だと思って決めつけない」
すーちゃんのシッティングを機会に、学んだとても大きなことでした。
N様のお宅のそばを通るたびに、すーちゃんとのシッティングの時を思い出します。
すーちゃん。
天国から、たくさんのいい子ちゃんクラブの仲間たちのことを見守ってね。
またね、すーちゃん、また会えるからね。